志願して介護の現場へ、大変だけどやりがい十分

考える女性

私が、特別養護老人ホームに就職したのは、IT企業のSE(システムエンジニア)に嫌気がさした時に遡ります。

当時は、毎日パソコンに向かう仕事を、とにかく辞めたくて、すぐに仕事に就ける資格を取得すべく、インターネットを駆使してホームヘルパー2級を検索しました。

講座受講すると、受講資格が特になしで、学科試験もなしという条件の良さに惹かれました。また、3年間の実務を積むと介護福祉士の受験資格もあり、これは、都合が良いと考え、SEの傍、週末にホームヘルパー2級の講座を受けることにしました。

ホームヘルパー2級講座を受ける方は、様々でした。余談ですが、一番多かったのは、なんとタクシー運転手です。

私は、ホームヘルパー2級受講中にIT企業を辞めて、特別養護老人ホームに正社員として、採用されました。好印象があったとは言えませんが、今思うに「福祉」に対しての意思が他の方とは、違う点だと思います。

実は、私は特別支援学校中等部の出身でした。主な理由としては、呼吸器機能に問題があり、一般の生活が困難になったためです。高校は、都立高校に進学したので、現在というか、中等部卒業までには、呼吸器機能はある程度回復しました。

特別養護支援学校には、様々な障害ないし病気の生徒が通学していました。特に筋ジストロフィー症と重複障害児の生徒が多かったことを記憶しています。

特に私が気にかけたのは、重複障害児の生徒でした。重複障害児は知的と身体の障害を持っている障害児のことを言います。なぜか私は、「重複障害児の介護をしたい。」と思うようになりました。

そのため、介護福祉士の受験資格が取れるホームヘルパー2級は、おいしいものでした。

ここから、実際に特別養護老人ホーム(略して特養)の事情が始まります。

私が、特養を就職先に選んだ理由は、重度認知症の入居者さんの介護をさせてもらって、腕を磨きたかったからです。こんな軽い気持ちで特養に就職した私には、試練が山ほどありました。

第一関門は、入居者さんの名前を全て覚えることでした。とは言え、学校のように名札をつけているわけではありません。とにかく、周りの介護士が名前を呼んだときに、すぐさま覚えるしかありません。ここで、名前を覚えるコツをバラします。

まず、顔のシミの場所を覚えることが重要です。顔のシミは、大概にして、同じ場所にはありません。この方は、右の頬にシミがある、あの方は、左手に大きなシミがあるなど、そのあたりを覚えると、すぐに名前を覚えることができます。

また、洋服の好みを覚えるのもいいかと思います。大概の方は、ズボンで生活をしていますが、中には、スカートが好きな方もいらっしゃいます。また、チェック柄が好きとか、無地が好きなどの好みが、普段着の中に現れます。洋服の好みは多種多様なので、覚えていると、洗濯に出したときに、これは、この方の、あれは、あの方の、とすんなり仕分けが出来て効率アップと新米介護としての期待も得られます。

トイレ介助この第一関門を突破すると、第二関門は、排泄介助です。排泄介助は、トイレ介助とオムツ交換の二つになります。最初は、トイレ介助が主になります。

トイレ介助で気になるのは、やはりにおいです。特養のトイレはやはり臭いです。なんとも言えない、排泄物が発酵したような異様な臭いがします。夏場、鼻で息を吸おうならば、吐き気を覚えます。

トイレ介助ができる入居者さんは、立位が一人では厳しいので、ふらつきには要注意です。また、一人介助や二人介助を入居者さんによって変わってくるので、そこも頭に入れておくとスムーズに介助ができます。

オムツ交換は、最初はとてもストレスを感じる排泄介助です。オムツ交換の方が、楽と思いがちですが、そうではありません。オムツ交換の時に、陰部洗浄をしっかりとしないと、尿路感染を起こして、入院をしてしまうや、オムツ交換中にベッドのサイドレールを外していて、そのまま、転落してしまうという事故もあります。

それ以上に、先輩介護士の指摘や注意がイライラさせます。やはり、危険を伴う業務なので、シビアになるのは分かるのですが、こちらとしても、しっかりとオムツ交換の手順を守っているのに、なぜ、違うのとか、他の介護士はこうしていたなどの言い分があります。

食事介助さて、トイレ介助の次は、第三関門の食事介助です。特養の食事は多種多様です。普通の食事の方もいれば、お粥の方、ゼリー食の方と分かれているので、お膳を運ぶ時にミスをしてしまうと、かなり叱られます。

食事介助の時に要注意点は、食事最中に「美味しいですか?」と聞いてはいけないことです。なぜかというと、お口の中に食べ物が入っている時に、話をすると誤嚥(ごえん)をしてしまうからです。

誤嚥は、高齢者には死亡リスクの高いものです。なので、食事介助には、話しかけてはいけないのです。

最初は、美味しいのかなと聞きたくになり、話しかけてしまいがちですが、これは禁物です。

ちなみに、食事介助をする前に、おかずの匂いを嗅いでおくと褒められます。なぜかというと、介護士はおかずの味見はできません。なので、匂いで味の感覚をつかみます。私の失敗例としては、匂いを嗅がずに食事介助をしてしまい、甘いデザートをおかずと間違えて食べさせてしまいました。私が介助した入居者さんは、ゼリー食だったので、形は全て同じでした。そのため、間違えてしまったのでした。介護現場では、こんな気遣いも必要なのです。

例外ですが、「胃瘻(いろう)」は聞いたことはあるでしょうか。胃瘻は、胃にダイレクトに穴を開けて、経管栄養を入れるというものです。介護現場では、これも重要視されます。最初は、担当にはなりませんが、半年程すると胃瘻準備や、胃瘻のチューブを繋ぎ、実際に経管栄養剤を落とす役目が回ってきます。ドキドキしますが、覚えると意外に簡単に落とすことができます。

また、胃瘻の後は体温を測ることが必要です。胃瘻の最中に、胃からチューブが抜けてしまうことが、ごく稀にあるのです、そのため、体温を測り、即座に体調の変化を掴むのが重要なのです。

お風呂介助第四関門は、お風呂介助です。私が勤務をしていた特養では、週2回のお風呂の日がありました。なかなか、お風呂の日にシフトが合わず、慣れないことが多いと思います。立位が取れるなら、介助は簡単ですが、私は、リフト浴が苦手でした。立位が取れる入居者さんは、湯船に自ら入れますが、車椅子での移動をしている入居者さんは、湯船にリフトに乗って浸かります。

実情として、お風呂介助の日は、介護士が慌てるので、イライラした雰囲気があります。慌てる理由は、食事に間に合うかなど様々ですが、とにかく先輩介護士は私に対して当たってきました。そんな時は、気にしないのも一つです。

話が戻りますが、リフト浴のどこが苦手だったかというと、単純に操作が分からなかったのです。リフト浴の入居者さんは、一日に二人から三人くらいだったのですが、ゆっくりと教えてくれないのです。つまり、介護現場は経験と勘が必要な現場でもあると私は悟りました。

最終関門は、見守りにつきます。これは、毎日行う業務です。見守りとは、話し相手をしながら、周りの介護士が介助中に、転倒、転落などの事故がないか、目を光らす作業です。

一見、楽だと思いますが、話のネタに苦労します。また、話かけても認知症のため、全く予想もしない会話になることもあります。

しかし、見守り業務の最初は苦痛に感じますが、慣れてくると、人生勉強になる業務ではあると思います。例えば、第二次世界大戦の時に、旧ソ連に抑留されていて、大砲を作り怪我で指をなくしたや、足尾銅山で働いていたなどと、若い世代には、理解しがたい貴重な話を聞くことができるのです。

そう思えた時には、新米介護士から一般介護士になれた時です。介護現場は、慌ただしく、イライラすることもたくさんあるので、最初は、嫌と思うことがほとんどです。しかし、楽しいと思えることも多々あるので、皆さん、介護現場を是非見てください。

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